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あくまでも提出期日に過ぎず、どうしても自分の口頭質問についてクエスチョンタイムの当日に本会議場で大臣から回答を受けたいと考える議員は、質問日の10審議日前までに質問を提出しておくことが事実上必要になる。
質問日の10審議日前当日には、提出されている質問の質問順番を決める手続きがあるからである。
この機会を逃してしまうと、たとえ、質問日3審議日前までに提出されたとしても、既に決められた質問順番リストの後ろに加えられていくだけで、実際に議場で大臣から口頭で回答を得るチャンスはほぼ皆無となる。
各大臣に対するクエスチョンタイムは最長一時間であり、この間に実際に口頭で回答を受けられる質問は僅かにすぎないからであり、質問日当日回答を受けられなかった口頭質問は、後日、書面回答を受けられるだけになってしまう。
更に、書面回答質問については、新たな作業や調査の必要があり、一定以上のコストがかかる場合には、各省は回答を拒否することも認められている。
日本では、国会での質問内容が明らかになるのが当日の深夜1時、2時ということが常態化しており、また、質問内容によっては到底数時間では準備できないようなもの、あるいは、膨大な作業を要するようなものもざらである。
これでは、当日朝に大臣にブリーフィングする時間もないなどということもしばしばであるし、大臣が十分な資料を基に、必要な準備をすることも不可能である。
こんな状況で「自分の言葉で喋れ」などと要求する方が土台無理であろう。
逆説的ではあるが、「政治家同士の議論は、骨太の大上段の議論でなければならない」というような固定観念がないことが挙げられよう。
むしろ、英国のクエスチョンタイムの特徴は、大上段に構えた議論ではなく、例えば、「国民年金支給額は来年いくらあげるか」「今年の冬も大量のインフルエンザ患者が見込まれるが、その備えは万全か」「英国のサッカーフーリガンについて、政府は渡航禁止などの措置を取るつもりはないのか」などへ生活に密接に関連した部分で議論が行われることが多い点にある。
これもまた、クエスチョンタイムを通じて国民に訴えかけ、政権交代の機会を窺うためには、理論や理屈、主義・信条をこれくり回しても仕方がない、むしろ国民の生活に密着した部分でポイントをかせがなければならないという、英国の徹底した保守性、現実主義に立脚していると言えよう。
こうした徹底した現実主義と二大政党制の下での激しい対立のため、クエスチョンタイムは、英国人に言わせれば、(子供じみた)(中身がない)ということになりがちである。
そうは言っても、テレビで放映される機会が最も多い議会の行事がこのクエスチョンタイムであることは確かであるし、クエスチョンタイムが政策論争は別としても、国民に政治を生々しく伝える一定の役割を果たしていることも確かであろう。
英国においては、閣僚が議会に拘束される時間が少ないことを指摘しておく必要があろう。
クエスチョンタイムは、先に述べたように、毎週、月、火、水の2時35分から3時30分及び木曜日の11時35分から12時30分の週4回、1回1時間弱と極めて限定されている。
この間に20以上ある各省に時間が割り当てられていくわけであるから、各大臣がクエスチョンタイムに費やす時間はわずかである。
例えば、大蔵大臣の場合は、4週間毎の木曜日2時30分から3時15分が割り当てられており、これで全てである。
それでも、各省の大臣は、クエスチョンタイム以外にも本会議や委員会で質問に答える必要があるが、首相の場合は、水曜日の3時から3時30分と週に30分、月に2時間、議会で質問に答えればよいのである(首相が委員会に呼ばれることはない)。
もちろん、その分、全てがその30分に凝縮され、全神経を費やすことになるのであるが、それ以上に、残りの多くの時間を実際の行政に費やすことができるというのは大きな利点であろう。
そこには、言わば国家という巨大な会社の長が、議会という名の株主総会に連日引き出され、質問を浴びせられ、ゆっくりと国家の行政課題について考えることができないというのは、好ましくないという考え方があるようである。
また、国民もこの三十分に注目するため、野党側もこの30分を得点稼ぎのための最高の舞台として歓迎し、最大限利用するよう全精力を注ぎ込んでいる。
なお、こうした定期的な首相に対する質問時間の歴史は、実は比較的新しく、1961年に導入された制度であり、前政権下の1997年までは、火曜日と木曜日の3時15分から3時30分の2回に分けて行われていたものである。
民主的独裁者である首相を議会に引きずりだすことはかくも難しいことなのである。
日本の場合、首相は、本会議のほか、党首討論、予算委員会や他の重要法案の総括質疑など、実に多くの時間を国会で過ごしている。
もちろん、これ自体は何ら非難されるべきことではなく、立法による行政の監視・チェック機能の充実を考えれば、当然のことであろう。
したがって、これまた、民主主義に対する国民性、感覚の違いとも捉えられよう。
ただし、英国の首相と日本の首相が議会・国会で過ごす時間には相当の違いがあることは確かである。
官僚は議会に出席しない。
さて、官僚は議会に出席しないかといえば、英国では、確かに本会議には出席しないが、委員会には、大臣とともにあるいは単独で出席することも多い。
各省の行政事務について精査を行う特別委員会について簡単に見てみよう(英国大蔵省の場合は、大蔵・公共サービス委員会。
特別委員会の役割を定めた議会の取り決めによれば、特別委員会は、「主要な官庁とその関連公共機関について、その支出、仕事振り、政策を精査する」とされている。
そのための権能として「審議のための証人を招集し、調査書や意見書または記録を提出させることができる。
各地に実地調査ができるほか、報告書をいつでも提出することができる」とされ、特別委員会の求めに対しては、大臣、役人を問わず、出席して答える義務がある。
実際、特別委員会の活動は比較的活発で、一会期に数個の課題についてまとまった報告書を作成することもまれではない。
見学がてら、何度か大蔵・公共サービス委員会の場に足を踏み入れたが、本会議や常任委員会と比べるとグッと静かで落ち着いた雰囲気で、裁判所の法廷にいるような気分にさせられる。
役所が被告席に座らされ、裁判官席には、11人の与野党の議員達が虎視耽々と付け入る隙を狙っているといった感じなのである。
被告席には大臣のみならず役人も座る。
言わば、ここでは大臣をヘッドあるいはキャプテンとして数人の役人も参加して役所がチームとなって厳しい尋問に立ち向かうのである。
それは正に、株主総会で、会長や社長が前面に立って様々な株主からの質問に受け答えする一方で、各部門の取締役や部長・課長もそれぞれの分野に関する細かい質問には責任をもって対応するのと一緒である。
今後ますます行政が多角化・高度化する中で、「政府の活動に対する監視・監督」は、議会の最重要な課題となっていくであろう。
その際、大臣だけではなく、行政の最先端で働く役人の参加なくして議会は国民に対する重要な責務を果たすことができるのであろうか。
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